顧客を深く理解できる
カスタマージャーニーとは、簡単に言えば「顧客の商品購入までの行動や思考や感情の動きを、見える化する事」です。
以前は、主要なメディアは新聞やテレビや雑誌程度でしかなく、顧客の動きの予測も差ほど難しくはありませんでした。
ですが、昨今はネットの台頭も関係し、通販の方法1つ取ってみても一定では無く、専門家の知見を用いたとしても、全体像を把握するのは難しくなっています。
これからの時代は、企業が生き残りをはかるのでしたら、そういった複雑化した環境がある事を理解した上で、顧客を深く理解出来る様な新しい分析法が必要となります。
その為には以前よりも、格段に増えたチャンネルを全て網羅した新しいカスタマージャーニーを用意しないといけません。
商品の先行きの不安を見通す
人間が1人で全てのデーターをチェックするのは至難の業になってしまいますが、顧客の動きが多様化するのに合わせて、マーケティングオートメーションツールやアドテクノロジーも以前に比べて格段に進歩しています。
収集出来る情報の精度も年々高くなっており、そのデーターをしっかり読み解けば、顧客がどういった購買プロセスで自社の製品を求めているのかを理解する事も決して難しくはありません。
例えば、HPの訪問数を見ていたとして、特定の時間にHPの訪問数が大きく伸びたとします。
その時に時間のデーターだけでは理由が分からずとも、ターゲット層の設定であったり他の情報も含めて検証してると、最初は想定しなかった思わぬ層に自社の製品が受け入れられているのではないかという見当をつける事が出来る様な事があるという事です。
その辺りが分かったならば、今度はそっちの層に受け入れてもらえる様な新商品の開発を考える事も出来ますし、自社の問題点がそこから透けて見えてくる様な事も有り得ないではありません。(※通販の方法が階層1にはやりやすいが、階層2には面倒に見えてしまっている等)
人間にはどうしても盲点が発生してしまう事は避けられませんので、それをカバーする為には仮想ターゲットを設定した上で精度の高い情報を集めて、どうしてその動きが発生したのかを真剣に検証する必要があると言い直す事も出来ます。
将来的に売れるものを見出すとは別ベクトルで、商品の先行きの不安を見通すという点でもカスタマージャーニーはとても有効です。
これも人間の死角と関係してきますが、今までブームで売れており、自社に安定した利益をもたらしてくれる商品であれば自然と人はそれに対して疑いを持たなくなります。
ですが、商品にはある種の波がある物ですし、ブームになった物がそのまま定着してくれるとは限りません。
一過性である危険を折込済みにしないでいれば、ブームが去った後に商品が思わぬ不良在庫と化してしまう様な事も有り得る事です。
ブーム後も定番商品になってくれる可能性も当然ありますが、その場合もブレイクしていた時よりは当然利益も一定程度下落します。
この辺りの潮目の分析を人間が独力で行おうとすると、やはり当事者であればある程に贔屓目が出てしまう物です。
逆転の可能性があるのではないかという希望的観測であったり、逆に憶病になり過ぎてしまい、必要以上に退いてしまって損を出してしまう様な事も当然出て来ます。
ですが、カスタマージャーニーを前提にしつつ常に分析をしているのであれば、引き潮と満ち潮のタイミング調整もそこそこ分かりやすい物にまとめていく事も可能となります。
ターゲットの明確化とゴールの設定
そんな顧客理解の必須アイテムとも言える、カスタマージャーニーの作り方ですが、まず最初に主要ターゲットを明確化する事から始めます。
ターゲットの明確化は通常のマーケティングでも行っているという声もあるかもしれません。
実際その通りではありますが、カスタマージャーニーでの明確化は、「ペルソナを設定する」と言って、通常のマーケティングよりも深いレベルで顧客の姿を肉付けしていく事を意味します。
つまり、「意識高い系の主婦」や「大企業の人事担当者」という様な概要レベルでは無くて、「年齢は〇歳で職業は△、年収幾らで趣味は□で子供は3人」の様にかなり深い部分まで肉付けするという事です。
これが的外れにならない為に、最新のテクノロジーによる情報収集が不可欠になってきます。
続いて、ゴールの設定も決して疎かに出来ないポイントです。
前述のペルソナの設定が出来たとして、「その人達に何をしてほしい為にカスタマージャーニーを作るのか」という点を明確化すると言い直す事も出来ます。
商品を購入してほしいという場合と資料をダウンロードしてほしいという場合でしたら、切口も全く変わる物です。
一見すると「同じ様な目的だから気にしないで良いのでは」と思える事が、実は深く突詰めると両者全く違うアプローチが必要だったという様な事も珍しくありません。
よりしっかりしたデーター収集の為には、そういった曖昧な部分は出来るだけ無くしておく事をお勧めします。
カスタマージャーニーのマッピング
他には、「カスタマージャーニーマップフレームの設定」も重要と思って下さい。
これは具体的なマップの構造図とも言えますが、横軸には
・認知
・興味や関心
・比較検討
・購入
が入ります。
そして、縦軸の方には縦軸には
・タッチポイント
・行動と思考と感情
・課題
・課題に対する施策
が入ると思って下さい。
此処まで出来上がれば、後は「具体的な顧客の情報取集」の段取が始まります。
顧客はどのような感情を抱きながらどのように行動し、どのようなタッチポイントで触れているのかという事をオンラインとオフライン問わずに徹底検証していきます。
過去の問い合わせ情報やSFAに入っている商談や、受注情報、展示会やセミナーで収集したアンケート等全てが重要です。
他にも製品・サービスへの満足度調査、カスタマーサポートの対応履歴などのデータもBtoB企業であれば、すかさず活用出来ると思われます。
その上で、設定したフレームに従ってラフにマッピングしていく最終段取に入ります。
この時に出来れば、会社内の多くの部署の人に参加してもらい、現場ならではの意見を言ってもらった上でマップの精度を高めるという手段も悪くありません。
行動指針を作る為の叩き台を作ると思って、まずは試作品を用意する程度の気持ちから始める位が丁度良い塩梅です。
企業目線ではなく、顧客目線で発想できるようになる
顧客目線でマーケティング施策を行わないと・・・
カスタマージャーニーを作成し、会社の行動指針に上手く活用出来る様になると企業の視点では見えてい来なかった顧客目線が透けてくる様になります。
例えば「ピアノを弾いてみたい」という話を誰かがしたとして、それをプロが聞いた場合、プロの視点で知らずと物を考えてしまう物です。
「自身が初心者だった頃の言事を覚えている様で覚えていない」という表現をしても良いですが、何年ものキャリアに基づいて最適な方法を提案しようとします。
勿論それはそれで素晴らしい事ではありますが、初心者の立場に立つと余りに沢山の事を言われても頭が付いていかず、「試しにちょっと言っただけなのに大事になってしまった」となって気後れしてしまう様な事も珍しくありません。
つまり、コミュニケーションの不備による先走りで噛み合わなくなってしまったという事です。
企業目線と顧客目線でも同様の事が言える物で、顧客の事を考えないで何となくマーケティング施策を打ち出してしまうと後で企業に悪評判となってリターンしてくる事があります。
分かりやすい所では、モバイルの動きを阻害する突然ポップアップしてくるアンケートであったり、広告等です。
企業の担当者はその気が無かったとしても、見る側にしたらストレスを持って来る迷惑企業にしか映らないという事も珍しくありません。
前述のピアノの例で見るならば、相手の都合や様子をよく考えずにプロ思考で話を進めてしまう失敗と同じ様な物です。
こういった行き違いを防止する為には、企業の新卒採用サイトをリニューアルするならば、採用サイトというタッチポイントだけで話を進めるのでは不十分と言わざるを得ません。
あるいは大学の就職相談コーナーであったり、友人との会話であったりマイナビやリクルート関連の情報を網羅している様な人物像を設定しつつサイトに載せる情報を考える必要があります。
先入観を持たずペルソナ設計をしましょう
企業目線で考えるならば、欲を出して「即戦力と成り得る社会人としての自覚を持った優秀な人材が欲しい」という様な視点が出るかもしれません。
ですが人対人の話で、相手がどういう事情にいるかを慮らず、自身の利益を最重要にするだけでは、仮に前述の様な人材がいたとしても倦厭されてしまうという事は十分に有り得ます。
カスタマージャーニーの最初の段取であるペルソナを設定するという事を重視するのは、そういったミスを減らす為でもあり、最終的にはその方が間違いなく会社のメリットにもなります。
ただし、相手の事を慮るといってもペルソナの設定時に妄想が入り込まない様にする事には細心の注意を払わないといけません。
具体的にターゲットを細かい部分まで肉付けするといっても、物によっては予想出来ない様な事も当然起き得ます。
警察の捜査等を想像すると分かりやすいと思われますが特定の人物像を聞いた場合に、頭の中に思い浮かぶイメージが正しい事もありますが、逆に先入観で色づいてしまっているという様な事もある物です。
証拠を揃えないままで、先入観だけで捜査をしてしまうと誤認逮捕等大問題になってしまう様に、カスタマージャーニー作成の際は事実に基づく面とそうでない面は明確に分けておかないといけません。
あくまでペルソナの設定は叩き台になる目標を、状況に応じて肉付けされる事を前提としとりあえず設定しているだけですので、テクノロジーで裏付がある様な場合以外は、「仮説であり要実証」という事でチェックを入れる癖は必ず付けておく事をお勧めします。
コツとして、どうしても先入観が拭いきれない場合は、その部分は他の人に代行してもらうというのも1つです。
色々なパターンが考えられますが、冷静に考えて勘頼みになっている様な自覚が自身に強くあると直感した時等も要注意と言えます。
企業目線ではなく顧客目線で!
後は1度カスタマージャーニーを製作したら、それをそのまま聖典の様にしてしまい、更新しないというのも問題です。
カスタマージャーニーは「特定の時期におけるデーターの集積」であって、その後もずっとそれが正しいとは限りません。
ライバル企業が新しい製品を発表した事による影響もありますし、昨今のコロナ禍の様な社会全体に大きい動きが発生してしまう様な事も出て来ます。
不況の影もある昨今で、社会の動きは以前よりもずっと加速しています。
1度作成したまま、後は更新しないで捨て置いてしまうのはやはり顧客目線に立つという意味では問題ですので、その点にも細心の注意が必要になります。
一貫性のあるサービスを提供するという点でも、企業目線ではなく顧客目線がある事はとても重要です。
企業のやりがちな失敗として、何か企画に問題が出てしまったとして、そのカバーを焦る余りに一貫性の無いテコ入れ企画を行ってしまう事等は珍しくありません。
エンタメ業界等を考えると分かりやすいですが、顧客の目線で考えずに続編や番外編を制作していき最初は人気だったはずの作品が駄作になってしまう様な事は多いです。
人気がある場合も、落ち目になってしまった場合でも共通ですが、新しい切口を模索するにしても一貫性のあるテーマが無いと今まで培ったブランドそのものに大きい傷を残してしまう事になりかねません。
企業の混乱は、企業の担当者が思っている以上に顧客に伝わってしまう様な所がありますので、そういった軸の部分に混乱をきたさない為にも機会を見計らっては、カスタマージャーニーを行うというのも1つの選択肢です。
上手い作成さえ出来れば、上向き時も下向き時も状況に応じた的外れではない施策をしっかり打つことが出来る様になります。
ちなみに、その辺りでやはり自信がないという様な事があるのでしたら、同業や異業種を問わずに他社が作ったカスタマージャーニーを参照してみるというのも悪くありません。
ヨーロッパの方も含めて、日本の方でも興味を持った人向けという事で多数の公開がありますので、「こういう物を作れば良いのか」という目安としてはとても便利です。
最後に注意事項として、カスタマージャーニーは多くのデーターであったり、人の協力が必要な分だけ作成に時間が掛かります。
顧客目線に立てるという点ではメリットがありますが、マップは随時更新される物として考えて完璧な物を作成する必要は無いという事は常に意識しておいて下さい。
マーケティング活動における意思決定が迅速で的確になる
カスタマージャーニーがしっかり出来ていれば、マーケティング活動での意思決定に迷いやブレが無くなる事も大きいポイントです。
「どういった層をターゲットにするのか」を、通常のマーケティングよりも徹底しておこなう事で狙い目を明確化する段取が入っていますので、ターゲットが「50前後の主婦」等漠然としていた頃よりも、格段に次の施策が打ちやすくなるという事がまず最初に挙げられます。
他にもマーケティング担当だけではなくて、営業や開発や、サポートも巻き込んで話を進めているならばマーケティング担当者独力でマップを作成していた時よりも死角が格段に減るという事も見逃せないポイントと言えます。
例えば顧客目線に立つ事は、商品が上手く売れてくれるのには絶対に必要ですが、企業側の視点が不要という事では決してありません。
企業がその商品に投資出来る現実的な資材の限度もありますし、ある商品を作ってほしいと言った場合に、技術的に一定の妥協をせざるを得ない様な時もあります。(※当然その逆で、思った以上のクオリティがOKな場合も)
完璧にする前にまずは叩き台を作りましょう
カスタマージャーニーのデーターを、参考にしつつ行動する際のワンクッションとも言えますが、関係するスタッフが意思統一出来ているならば、0から1つずつ五里霧中で話を進めるよりも格段に手早く結果に繋げられます。
「どういった目的でどの部署はどう動いているのか、そしてターゲットはこんな人物である」という事が明確化されているだけでも、部署ごとに違う切口で動いてしまい二度手間になる事が無いと言い換える事も出来ます。
ちなみに、マーケティング活動で迅速な結果に結びつけるカスタマージャーニー作成の為には、あまり完璧な物を目指すのではなく、一応の叩き台として作る事がやはりこの段階でも重要になります。
カスタマージャーニーは、ペルソナを作成した後に各種の感情要因であったり、企業の事情等色々なデーターを落とし込んで全体を俯瞰する図を完成させる事が最大のテーマです。
全体を改めて俯瞰して見た場合に、今まで死角になっていた部分は何処かであったり、強化すべき点は何処かといった点を詳らかにしていきたいので、言い切ってしまえば「その商品を売る限りにおいて永久にマップが完成する事」はありません。
具体的な行動に移る前の骨子であり、素案部分ですので、その作成時から委縮してしまうと本題に入る所ではなくなってしまいます。
それこそ分かり難い場合は、ホワイトボードに書き止める一応のマトメ図程度と思う位でも良いですので、その辺りは気楽に考えて構いません。
的を得たペルソナ設計を意識しましょう!
IT化が加速した昨今、その分出来る事は増えましたが、人間そのものは別に進化を遂げた様な事も無いです。
ですので出来る事が増えた分だけ、何から手を付けて良いのか混乱してしまうという事も増えました。
マーケティングも例外ではなく、チラシ広告1つにしても方法論が山のようにありますし、動画を作成するにしても、自社製作が良いのか、それともプロに依頼したら良いのか等で担当者の負担は増加する一方です。
そういった中で、現実的な行動をする為には一応の工程表が欲しい物であり、カスタマージャーニーとはその1つに過ぎないと考えて下さい。
施策をするにしても、改善するにしても、全員の意思統一がされているならば同じ意見の堂々巡りで時間を無意味に浪費してしまう事もありません。
最悪のケースで、部署間の連絡が疎かであった為に同じ様な施策を二重発注してしまう様なトラブルもカスタマージャーニーをしている限りでは、相当に防げるはずです。
課題がどのフェーズにあるのかというポイントも、図式化する事で直ぐに分かる様になりますので、勿論意見の調整が皆無になるとまでは言いませんが、何から手を付けて良いのか分からず困惑してしまいスタッフの士気が下がる事も無くなります。
ただし、迅速で的外れではない行動に繋げる為には、やはりペルソナの設定が的外れではない事が最も重要です。
「こういう人であってほしい」と「実際に商品を使っている人」には、やはり同じ様で差があります。
現実的なデーターで肉付けしたり、複数の意見を聞いた方が良い理由の一端でもありますが、特定の人物像を聞いたとして、想像力は何処までも膨らんでしまう事があるのは否めません。
あるいは個人の価値観で、「それは絶対にしない」と思っていた物が実際は違った等というケース等は珍しくない物で、その辺は年齢や性別や生まれた地域等によっても、全く違う意見になる様な事もあります。
その辺りを意識しないままで、カスタマージャーニーの心臓部であるペルソナの設定をしてしまうとマーケティング活動も変な方向に動いてしまう様な事にもなりかねません。
色々なカスタマージャーニーの作成を挑戦しましょう!
誤解されやすい部分ですが、ペルソナの設定は決して個人の想像だけで終わらせる物では無いです。
「叩き台として構築した人物像+インタビュー等の客観的データーの肉付け」で構築される物ですので、その点には特に注意して下さい。
ちなみに、此処が疎かになっていて、こういう行動を取ってほしいという希望的観測が入ってしまっていたりすると、大きい問題に発展しやすいです。(※つまりマーケティング活動に全く役に立たないという事)
同業他社との差別化を図る為の、マーケティング活動を考えるにおいても、例えば月1等でマッピングする様な体制づくりがしっかりなされている限り、「競争が激化している中で、顧客が何を求めているのか」を見極める為にとても頼りになる材料になります。
他社がやっていない、小規模な自社でも可能な施策が透けて見える様な事も珍しく無いです。
ちなみに、昨今はカスタマージャーニーがとても注目されている事もあり、勉強の為の教材であったり参考資料等もネットや書店を問わずに多く出ています。
より精密な事が知りたいという様な時は、その辺に挑戦して知見を深めたり、市民講座で開かれているカスタマージャーニーの勉強会等を利用してみるというのも悪くありません。
メンタル面と現実面を上手く網羅したカスタマージャーニーの作成が、自在に出来る様になれば間違いなく企業にも多くのメリットがありますので、色々な挑戦をしてみる事をお勧めします。
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