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BtoBマーケティングでのABM?MA?SFA?それぞれの違いを解説

 

ABM(アカウントベースマーケティング)

ABMとは

近年、BtoBマーケティングの分野においてABMに注目が集まっています。ABMとは、Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)の頭文字を取った略語で、自社にとって価値が高い顧客を選定し、その顧客に対して訴求することで利益の最大化を目指す戦略です。従来のマーケティングは、広く見込み客を獲得した上で自社にとって有益な顧客を絞り込んでいくという手法でしたが、ABMは特定のターゲットに狙いを定めてアプローチを仕掛けていくという特徴があります。従来のマーケティング手法が広く網を張ってターゲットを捕獲するようなイメージであるならば、ターゲットを絞った上でアプローチするAMBは槍で突くような手法であると言えるでしょう。

ABMは、2000年代はじめに英国のマーケティングコンサルティング会社である「ITSMA」が提唱したと言われており、決して新しい考え方ではありません。しかし、テクノロジーの進歩や新型コロナウイルスによる営業活動の変化といった要因から、ここ数年で注目度が高まっています。

ABMはあらかじめ自社にとって価値がある顧客を選定する必要がありますが、顧客を選定したり選定した顧客に対して一対一のコミュニケーションを取ったりするのには多くの工数を要します。そのため、本格的にABMを実施できる企業は限られていましたが、近年はテクノロジーの進歩により様々なツールが開発され、自社にとって価値がある顧客を時間やコストをかけずに選定できるようになりました。このようなツールが広く普及し、実施するハードルが劇的に下がったことが数多くの企業がABMに注目する理由のひとつと言えます。

また、ここ数年は新型コロナウイルスの影響から、従来のようなオフラインでの営業活動や展示会が行えなくなりました。これにより営業活動や展示会のオンライン化が進んでいますが、それに伴って獲得した顧客データをいかに有効活用して新規顧客獲得につなげていくか、接点がある顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めていくのかといったポイントの重要度が増しています。このような背景の中、顧客データを基に重要な顧客を選定し、顧客ごとに最適なアプローチを仕掛けていくABMに注目が集まっています。顧客獲得のプロセスが複雑化する中、営業担当者の経験や勘に頼ることなく、戦略的に施策を実行していくことの重要性が高まっているのです。

ABM導入のメリット

以上がABMの概要と注目度が高まっている背景となりますが、ABMを導入するとマーケティング部門と営業部門の連携を円滑化することが可能です。従来のマーケティングでは、リードの創出までをマーケティング部門が担い、その後の工程は営業部門が担うケースが一般的です。しかし、このような手法ではマーケティング部門の目標が異なることで、連携が上手く取れないというケースは良く見られます。「より多くのリードを獲得すること」を目標に掲げるマーケティング部門と、「より多くの受注を獲得すること」を目標に掲げる営業部門との間で動きがバラバラになってしまうという問題を抱えている企業は少なくないでしょう。しかし、ABMではターゲット顧客を明確化するため、マーケティング部門と営業部門とで事業目標に対するKPIを共有しやすくなります。ABMを導入すると、ターゲティングから成約につながるまでを事業目標として考える必要があるため、組織全体で意思が統一されます。これにより、部門間でのコミュニケーションが円滑化され、業務効率や成約率の向上につなげることが可能です。

限られたリソースを有効活用できるというメリットもあります。社内の人材や資金は限られているため、見込み度が低い顧客へ積極的にアプローチを仕掛けることは避ける必要があります。ABMでは、あらかじめ選定したターゲットのみにアプローチを仕掛けるため、一つのアカウントに費やすリソースを増やすことが可能です。また、見込み度が高い顧客に集中してアプローチを仕掛けることで、リソースを減らしながら成約数の向上を図ることもできるでしょう。リソースを減らしながら成約数の向上を図れるため、ROIの向上も期待できます。これまでの平均的な顧客と比べて大きな利益につながるターゲットを選定できれば、他の顧客の数倍のリソースを割いたとしても十分なROIを出すことが可能です。加えて、ABMでは顧客ごとに異なるアプローチを実施しやすくなりますが、顧客としては不特定多数に向けられたアプローチよりも、自身に向けられたアプローチの方が共感しやすくなるため、限られたリソースでも高い成約率を実現しやすくなります。

さらに、ABMではアプローチする顧客を限定するので、効果測定がしやすくなるというメリットもあります。顧客に対するアプローチはスピード感を持って実施することが重要ですが、効果測定による分析をスピーディに実施できるようになると、PDCAも高速で回せるようになるので効果的に施策を実施していくことが可能になるでしょう。
このように様々なメリットがあるABMですが、顧客データが蓄積されていないと上手く運用できない可能性があります。これは一定数の顧客データないと、自社にとって有益な顧客を選定するのが難しいためです。ABMでは膨大な顧客データの中から、より価値が高い顧客を選定することで利益の最大化を目指す戦略なので、顧客データが少ない場合はまずデータの収集に注力する必要があります。

ABM導入を検討しよう

運用が軌道に乗るまでには一定時間を要することも念頭に置いておきましょう。ABMは組織全体で取り組むマーケティング手法なので、特に部門間の連携がスムーズに行えていない場合は体制構築に時間がかかる可能性が高いです。そのため、部門間の連携がスムーズに取れていない場合は、マネジメントできる人材の配置を検討すると良いでしょう。また、営業部門においては、今まで受注につながっていた顧客を放棄せざるを得ない可能性もあるため、導入に反対する担当者が出る恐れもあります。ABMを導入する際は、組織全体に導入の目的をしっかりと伝えることが重要で、場合によっては営業担当者に個別で説得することも検討することも大切です。

 

MA(マーケティングオートメーション)

MAとは

ABMと混同されがちなマーケティング用語はいくつかありますが、代表的なもののひとつがMAです。MAとは、Marketing Automation(マーケティングオートメーション)の略で、マーケティング業務を効率化するためのツールを指します。BtoBマーケティングは、リードジェネレーション・リードナーチャリング・リードクオリフィケーションの3つのプロセスで成り立っているのが一般的です。この一連のプロセスはデマンドジェネレーションと呼ばれていますが、MAツールにはデマンドジェネレーションの各プロセスを支援するための様々な機能が備わっています。

BtoBマーケティングの3つのプロセス

リードジェネレーション

リードジェネレーションは、将来的に顧客になる可能性を秘めたリードを獲得することを指しますが、MAツールにはユーザーに自社を認知してもらう機能や、過去に自社と接点を持ったことがあるユーザーにアプローチする機能が備わっています。例えば、SNSと連携することで認知拡大を図って自社サイトへと誘導したり、自社サイトを訪問したことがあるユーザーにプッシュ通知を送って再訪問を促したりすることが可能です。また、MAツールにはメールマーケティング機能も備わっており、顧客の見込み度に応じて異なる内容・タイミング・頻度でメールを送信することができます。この機能では、メールの到達率・開封率・クリック率・コンバージョン率といった指標も把握できるため、これらの指標を分析することで高精度なメールマーケティングを実施することが可能になります。

MAツールには、リードジェネレーションで獲得したリードを管理する機能も備わっています。獲得したリード情報はツール内のデータベースで一元管理することができ、必要に応じてセグメントやタグ付けが可能です。また、管理できる顧客データは実名化されたものだけではありません。自社サイトを初めて訪問した匿名の見込み顧客に対しては、Cookieを発行することで以後の再訪問時にも継続してトラッキングすることができます。このような匿名の見込み顧客の行動履歴は、後々に名刺交換やフォーム入力で得られた実名情報と紐づけられる場合もあり、顧客の関心の高さや興味の方向性を知るのに役立つことがあります。

リードナーチャリング

リードナーチャリングは、獲得したリードの購買意欲を高めていくプロセスを指しますが、このプロセスを効果的に実施するためには顧客の属性や嗜好などを把握しておかなければなりません。MAツールでは顧客管理を一元管理できるので、必要なときに必要な情報を速やかに取り出すことが可能です。例えば、一元管理しているデータを基に顧客リストを作成してメールを送信したり、自社サイトを訪問したことがあるリードに対してリターゲティング広告を配信して再訪問を促したりすることができます。

リードクオリフィケーション

リードクオリフィケーションは、大量のリード情報から見込み度が高いリードを選定するプロセスを指しますが、MAツールには顧客の見込み度を可視化するためのスコアリング機能が備わっています。スコアリング機能は、リードの各行動に対して点数を付与することで見込み度を判定する機能です。例えば、自社サイトを訪問した場合は2点、資料を請求したら10点、メールを開封したら3点、メールを開かなかったら-3点といったようにスコアリングします。また、あらかじめ点数のしきい値を設定しておくことで、リードの見込み度を「Cold」「Warm」「Hot」といったように段階的に把握することが可能になります。

MAツール導入するメリット

また、MAツールには、ランディングページやフォームの作成支援機能、自社サイトで表示させるコンテンツや広告をユーザーごとに設定するパーソナライズ機能、リードがメール開封やサイト訪問などの特定のアクションを行ったときに担当者にアラートを発信する社内アラート機能、マーケティング施策の結果を視覚的にまとめられるレポーティング機能なども搭載されています。そのため、MAツールを導入すればマーケティング部門の業務効率を飛躍的に高めることが可能です。

なお、MAツールはオートメーションという名前は付いていますが、導入すれば自動的に顧客が増えるような万能なツールではありません。あくまでもマーケティング業務を支援してくれるツールなので、導入する際はどのような課題を解決したいのかを明確にしておくことが大切です。また、事前にカスタマージャーニーマップを作成したり、セグメントの基本設計を行ったり、自社サイトに掲載する記事や配布するホワイトペーパーなどのコンテンツを準備したりしておくと、スムーズに導入することができます。

MAツールの導入を検討しよう

以上がMAツールの概要となりますが、ABMは特定のターゲットに絞ってアプローチを行う手法であるのに対し、MAは不特定多数のターゲットに対してのアプローチを効率化してくれるという違いがあります。また、MAは顧客一人ひとりにフォーカスした機能を有しているのに対し、ABMは企業や組織をターゲットにするという違いがあります。例えば、自社サイトへの訪問履歴からリードが顧客化する可能性を判断する場合、MAでは同一ユーザーが何回アクセスしたか、自サイト内のコンテンツをどれくらい閲覧したかといった情報から関心度を判断して、アプローチの可否を決定します。そのため、あるユーザーが自サイトの1ページのみを閲覧しただけで離脱した場合、MAでは見込み度が低いと判断される可能性が高いです。しかし、自サイトを訪問したユーザーのアクセス元を調べた結果、同一の企業から数多くのアクセスがあったとしたら、個々のユーザー単位で見ると見込み度は低いと判断できても、組織全体でみれば見込み度は高いと判断することが可能です。このように、ABMとMAはアプローチするか否かの判断基準が組織単位なのか、個人単位なのかという違いがありますが、どちらも情報収集や分析を重視し、見込み度が高い顧客を見極めた上でマーケティング施策を実施していくという点では共通しています。そのため、ABMとMAは組み合わせて活用されるケースが増えています。

ABMとMAは特徴が異なるので、それぞれの特徴を理解して使い分けたり併用したりしていくことが大切です。

 

SFA(セールスフォースオートメーション)

SFAとは

SFAとは、Sales Force Automation(セールスフォースオートメーション)の略で、日本語では営業支援システムなどと訳されます。企業の営業活動を支援してくれるシステムで、顧客管理・案件管理・行動管理・予実管理・商談管理といった機能が備わっています。

SFAの5つの機能

顧客管理機能

顧客管理機能は、文字通り顧客情報を管理するための機能です。企業名・所在地・連絡先・担当者名・担当者の属性・問い合わせ履歴・取引履歴といった情報を一元管理し、社内で情報を共有することができます。顧客管理機能を活用すれば、別々の営業担当者が同一の顧客に重複してアプローチをしてしまうなどのミスが抑制できるとともに、担当者が変更になった際にスムーズに引継ぎができるようになります。

案件管理機能

案件管理機能は、営業活動における各案件の詳細情報を一元管理できる機能です。案件ごとに、営業担当者・取引先担当者・商談の進捗度・受注見込み度・見積もり・売上金額といった情報を記録することができます。従来の営業活動では、各案件の詳細を担当者しか把握していないというケースも多く、担当者が不在のときの対応に不備が生じるなどの問題が起こりがちでした。また、営業活動が個々の経験やノウハウ、勘に頼ったものになりやすいという問題もありましたが、SFAの案件管理機能を活用すれば各案件の詳細が社内で共有されるので、担当者が不在でも問題なく対応できるようになります。加えて、社内に営業ノウハウが蓄積されていくのもメリットのひとつで、過去の案件を分析して最適なアプローチ方法を導き出すことも可能となります。

行動管理機能

行動管理機能は、各営業担当者の業務を可視化できる機能です。訪問回数・テレアポのコール数・商談回数・受注数などの情報を管理できるため、営業担当者の評価基準に役立てることができるとともに、受注数が伸びない原因の発見につながる可能性もあります。

予実管理機能

予実管理機能は、様々な基準から売上予測と実績を可視化してくれる機能です。営業担当者ごと、部署ごと、顧客ごと、商品・サービスごとに売上予測と実績を可視化でき、予算と実績を比較して目標の達成率や達成状況を把握したり、営業方針や予算の使い方などの改善に役立てたりすることができます。

商談管理機能

商談管理機能は、日報や週報など営業活動に欠かせない活動報告の作成をサポートしてくれる機能です。フォーマットに従って入力していくだけで活動報告業務を完了させることができるため、各営業担当者の負担を軽減することができます。また、作成した営業活動はリアルタイムでシステムに反映されるため、管理者やマネージャーは速やかに各営業担当者の行動や成果を把握することが可能です。

SFA導入のメリット

その他にも、営業担当者のスケジュールやタスクを管理する機能、見積書の作成をサポートしてくれる機能といった機能も搭載されているため、導入することで営業担当者がコア業務に集中できるようになります。営業活動に伴う業務は多岐にわたりますが、最も重要なのは顧客へのアプローチやコミュニケーションです。SFAを導入すると、活動報告を速やかに済ませることが可能になったり、必要な情報を素早く検索したりできるようになるため、顧客とのやり取りにより多くの時間を割けるようになります。

また、従来の営業活動では、顧客情報や各案件の詳細、顧客との関わり方などがブラックボックス化されがちですが、SFAを導入すれば各営業担当者の活動を可視化することができます。営業活動が見える化されれば、顧客情報や各案件の詳細などが社内全体で共有されるため、各情報を分析することで成功確率が高いアプローチ方法を見出しやすくなります。加えて、各営業担当者の経験や勘に頼らない営業が可能となるため、営業の再現性を高めることも可能です。さらに、営業活動が見える化されれば、業務プロセスのチェックも容易となるため、売上向上の妨げとなっていたボトルネックの発見につなげることができます。

以上がSFAの概要となりますが、SFAはABMを実施する上で有効なツールの一つに位置付けられます。ABMの活動は、大きくリード獲得から育成・商談・顧客維持の3つのプロセスに分けられますが、営業活動を効率化してくれるSFAは商談のプロセスで活躍します。

SFAとCRM

また、SFAと混同されがちなシステムにCRMがあります。CRMは、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の略で、顧客との関係性を管理するためのツールです。顧客情報管理機能・配信機能・問い合わせ管理機能・データ分析機能などが備わっており、導入することで顧客との良好な関係を維持しやすくなります。また、SFAはMAツールと比較されることも多く見られますが、MAツールは主にマーケティング活動の具体的な施策を実施するために使われるツールで、SFAは営業活動に移行した後の情報や進捗を管理するために使用します。そして、CRMは営業活動により顧客化した後の顧客情報の管理やコミュニケーションに活用するツールとなりますが、SFAとCRMは機能的に重複している部分も多いため、近年はこれら2つのシステムを集約したSFA・CRMツールも数多く登場しています。

なお、SFAは単体で利用するよりも、MAツールと連携することでより高い効果が発揮されます。MAツールは見込み顧客の獲得から有望な見込み顧客に育成するまでを担うツールですが、育成した顧客情報が営業部門と共有されなければ意味がありません。

しかし、SFAとMAツールと連携すれば、マーケティング部門から営業部門へとスムーズに顧客情報を提供することが可能となります。加えて、仮に営業活動で受注に至らなかった場合でも、再びマーケティング部門に情報を渡して、継続的にアプローチしていくことも可能となります。なお、SFAとMAツールの連携は営業部門・マーケティング部門の双方にメリットをもたらしますが、ツールによっては相互に連携できないものもあります。そのため、SFAやMAツールを導入する際は、連携可能なツールを確認しておくことが大切です。

 

インサイドセールス

インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、メールや電話などを活用して非対面で行う営業活動を指します。これに対し、営業担当者が顧客を訪問する従来の営業スタイルをフィールドセールスと言いますが、近年の新型コロナウイルスの影響からインサイドセールスを導入する企業が増えています。また、従来の営業ではターゲット選定・リード獲得・アプローチ・アポイント獲得・商談・契約までの一連の流れを一人の営業担当者が担っていました。しかし、営業活動の効率化を図るために、ターゲット選定からリード獲得までをマーケティング部門が、アプローチからアポイント獲得までをインサイドセールスが、商談から契約までをフィールドセールスが担うという分業型のスタイルが一般化しています。

インサイドセールスの2つの種類

SDR

インサイドセールスを導入すると顧客に対して効率的にアプローチすることが可能となりますが、インサイドセールスは大きくSDRとBDRの2種類の形態に分けることが可能です。SDRとは、Sales Development Representativeの略で、反響型営業やPULL型営業などとも呼ばれます。主に問い合わせを行った顧客へアプローチする手法で、Webサイトからの資料請求や問い合わせフォームへの入力などを行った顧客に対して最初のアプローチを行います。問い合わせを行う顧客はニーズが顕在化しており、購買意欲が高いという特徴があるため、購買意欲が低下しないように適切なタイミングでアプローチをすることが大切です。なお、SDRの対象は主に中堅・中小企業となるため案件数は確保しやすいものの、1件あたりの単価や継続率は低くなる傾向があります。

BDR

BDRとは、Business Development Representativeの略で、新規開拓型営業やPUSH型営業などとも呼ばれます。自社にとって利益につながりやすい企業に自社から積極的にアプローチを仕掛けていく手法で、主な目的は自社への認知を拡大させるとともに、顧客が抱える潜在的なニーズを引き出した上で成約につなげることです。BDRの対象は、自社を認知していない可能性があるとともに購買意欲も不明なため、SDRと比べると成果につながるまでに長い時間がかかります。また、BDRの対象は大手企業が中心で、SDRとは異なる方法でアプローチをしていく必要があります。SDRでは担当者に電話やメールをしたり、メルマガを配信したりしますが、BDRでは代表電話などに電話したり、キーパーソンとなる方に手紙を出したりするのが主なアプローチ方法となります。

インサイドセールスの戦略を設計

以上がインサイドセールスの概要となりますが、テレアポとの違いが分からないという方は少なくないでしょう。テレアポは商談の許可を得たり日程の調整を行ったりする業務を指しますが、テレアポはインサイドセールスに含まれる業務のひとつです。インサイドセールスではテレアポを含めた様々な手段によって、見込み顧客との関係構築や商談設定を目指していきます。

また、インサイドセールスはABMの成功に欠かせない存在としても注目されています。ABMでは、まず自社にとって優良な顧客を選別する必要がありますが、顧客が優良かどうかを判断するにはBANTCと呼ばれる情報を入手しなければなりません。BANTCとは、Budget(予算)Authority(決裁者)Needs(何を求めているか)Timeframe(購入する可能性がある時期)Competitor(競合)の頭文字を取った略語です。通常、これらの情報は顧客との商談を通して徐々に分かってくるものですが、インサイドセールスを活用すれば商談前にBANTCを入手することが可能です。インサイドセールスでアポイントが取れず、商談に至らなかった場合でも獲得した情報は、その後のアプローチに活かすことができますし、他の企業へアプローチする際の戦略立案にも役立ちます。

このような理由からインサイドセールスとABMの相性は非常に良いと言えますが、インサイドセールスでABMを実施していく際はまず戦略を設計する必要があります。自社商品やサービスの受注状況を確認した上で理想とする顧客像を定義し、リードになり得る条件やアプローチの戦略を立てていきます。戦略設計では、ROIやCPAなどのKPIの設定も行っておきましょう。

次に、設計した戦略を基にターゲットリストを作成します。ターゲットリストの質はABMの成否を左右する重要な要素となるので、このステップは非常に重要です。なお、質の高いターゲットリストの条件としては、最新情報が記載されている、必要な情報が揃っている、情報が重複していないといった項目が挙げられます。

ターゲットリストが完成したら、トークスクリプトの作成を行いましょう。トークスクリプトとは、営業活動において顧客に対してどのような内容をどのように話すのかを記載した台本のようなものです。インサイドセールスは非対面で顧客とコミュニケーションを取るため、対面での営業活動よりも言葉遣いなどの話し方が重要となりますが、トークスクリプトを作成しておけばスムーズにトークを進めることが可能です。また、担当者の技量にかかわらず一定の品質で営業活動が行えるようになるため、より成果につなげやすくなります。

次に、いよいよターゲットへアプローチを仕掛けていきますが、アプローチは購入の決定権を持つキーパーソンに行うことが重要です。キーパーソンの選定を誤ると、購入決定権を持つ人までアプローチが届かずに受注に至らなかったり、相手先での社内確認が増えて商談が長期化したりする恐れがあります。そのため、アプローチを仕掛ける際は、その対象として相応しい人物であるかを慎重に判断しましょう。

アプローチの結果、アポイントを獲得できたら後は営業担当者が商談を行う流れとなりますが、上記の通りアポイントが獲得できなかったとしても獲得した情報はその後のアプローチに活かすことが可能です。そのため、インサイドセールスの担当者は単に商談の許可を得るだけでなく、今後の施策に活かすことができる様々な情報を顧客から引き出すことも求められます。

 

フィールドセールス

フィールドセールスとは

フィールドセールスとは、顧客を直接訪問して自社商品やサービスを提案する営業スタイルです。近年は、顧客を直接訪問せずに非対面で営業活動を行うインサイドセールスを導入する企業が増えていますが、マーケティング部門やインサイドセールスが導入されている企業においては、マーケティング部門が獲得しインサイドセールスが育成したリードを成約に導くことがフィールドセールスの役割となります。また、近年はインサイドセールスがクロージングまで担当するケースも増えていますが、フィールドセールスの方が柔軟な対応がしやすいというメリットがあります。フィールドセールスは一日に対応できる件数は限られますが、顧客と対面して商談などを行うため相手の反応を確認しながら提案を行うことが可能です。インサイドセールスでもWeb会議ツールなどを用いれば相手の反応を見ることはできますが、対面の方が表情などの細かな反応を把握できます。加えて、インサイドセールスではあらかじめ決められたシナリオに沿ってコミュニケーションをすることが多いので、柔軟な対応が難しいという側面があります。相手の反応を予測して複数のシナリオを用意しておけばある程度は柔軟に対応できますが、柔軟度は対面には劣ります。対面でのコミュニケーションでは、相手の反応を見ながら臨機応変に対応するのが容易で、反応が悪いと感じたら別の切り口から話を展開させたり、自社の別商品・サービスを提案したりすることも可能です。

フィールドセールスの注意点

このようなメリットがあるフィールドセールスですが、フィールドセールスを担う担当者にはコミュニケーション能力やプレゼン力といった能力が必要です。フィールドセールスでは、顧客と対面で会話をしながら相手が潜在的に抱えるニーズを引き出す必要があります。加えて、何気ない世間話で相手との関係性を構築したり、相手が興味を抱く話題を見極めたりする必要もあるため、高いコミュニケーション能力が求められます。また、自社商品やサービスがどれだけ優れていたとしても、その魅力を伝えられなければ成約に至る可能性は低いと言えます。そのため、フィールドセールスを担う人材には、自社の商品やサービスの特徴を的確に説明するとともに、顧客に購入したいと思わせるようなプレゼン力が必要です。

また、ABMを実施する際は、まず顧客リストからターゲットとなる顧客を選定し、インサイドセールスでアプローチを行って商談につなげ、最後にフィールドセールスが成約を獲得するという流れとなりますが、フィールドセールスがスムーズに成約を獲得するにはインサイドセールスとの連携が不可欠です。インサイドセールスを導入すると、見込み度が不明な顧客のもとに時間と費用をかけて訪問する必要がなくなり、見込み度が高い顧客のみにアプローチできるため営業効率は大幅に向上します。インサイドセールスは、フィールドセールスの役割を訪問と受注に集中させる存在として今や欠かせないものとなりつつありますが、フィールドセールスとの連携が上手く取れていないと営業効率の向上は期待できません。インサイドセールスは、マーケティング部門が獲得したリードを育成してフィールドセールスに受け渡すのが主な役割となりますが、育成が不十分なままフィールドセールスにリードを受け渡してしまうとフィールドセールスの手数が増えてしまいます。逆に、フィールドセールスへの受け渡しが遅れてしまった場合も、顧客の購買意欲が低下してしまい成約につながりにくくなってしまいます。インサイドセールスからフィールドセールスへのリードの受け渡しは適切なタイミングで実行される必要がありますが、適切なタイミングを逃さないためには事前にリードの受け渡しの条件を明確に定めておくことが重要です。

また、リードの受け渡しの際に必要な情報を提供することも重要です。フィールドセールスとインサイドセールスの情報共有が上手く行われないと、最悪の場合は商談が破談となってしまうケースも考えられます。営業活動の分業化は業務効率化に有効な手段ではありますが、営業活動を分業化すると顧客とかかわる担当者が増えるという側面があります。一人の担当者がリードの獲得から成約までを担う従来のスタイルは、効率的には悪いですが顧客へのアプローチは一貫して行えるというメリットがあります。一人の顧客と関わる担当者が増えるほど情報共有の重要性は高まりますが、フィールドセールスをインサイドセールスの情報共有にはSFAやCRMといったツールが不可欠です。これらのツールでは、顧客情報を一元管理できるとともに、営業活動のプロセスを数値として可視化することができます。SFAやCMRを導入すれば、営業活動に関する様々な情報を社内全体で共有できるようになりますが、可視化できない情報もテキストとして共有できるので、フィールドセールスとインサイドセールスでの情報共有がスムーズに行えるようになります。

また、営業活動を分業化する際は業務フローを明確にしておくことも大切です。一人の顧客に関わる担当者が増えると、必ず誰がどのように担当すべきか迷う場面が出てくるので、営業活動における全てのフェーズで誰がどのように対応していくのかを明確にしておきましょう。業務フローが明確になっていれば、部門間でのリードの受け渡しがスムーズになるとともに、連係ミスの発生も抑制することが可能です。

フィールドセールスはうまく使い分けよう

なお、上記の通り、近年はインサイドセールスがクロージングまで担当するケースも増えていますが、フィールドセールスは実物の商品を扱う企業に適しています。顧客に実際に手に取ってもらうことで自社商品の魅力が最大限伝わるため、実物商品を扱う企業ではフィールドセールスが欠かせないと言えます。また、対面でのデモが必要な商材を扱っている場合もフィールドセールスが不可欠です。フィールドセールスでは、その場で実際に使っている様子を見せたり使い方を直接説明できたりするため、成約の確度を高めることが可能です。一方で、システムなどのサービスを提供している企業の場合は、インサイドセールスのみで完結できるケースも少なくありません。フィールドセールスとインサイドセールスは特徴が異なるので、扱う商品やサービスによって使い分けたり併用したりすることが大切です。

高橋和人
高橋和人
Webメディア運営、MAツール運用など、インサイドセールス戦略の立案から実務まで幅広く担当してます。
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